2025/04/14
191. 7人の弟子と7つの手紙(第6の手紙)
これまで、黙示録の7つの教会の天使たちへの手紙を、ヨハネ福音書の、ティベリアス湖畔で漁をしていて復活したイエスと出会った7人の弟子たちに当てはめ、その妥当性を検証してきた。ヨハネ福音書には、「シモン・ペトロ、ディディモと呼ばれるトマス、ガリラヤのカナ出身のナタナエル、ゼベダイの子たち、それに、ほかの二人の弟子が一緒にいた」(ヨハ21:2)と書かれており、この順で行くと第6の手紙は「ほかの二人の弟子」の一人ということになる。
黙示録の第6の手紙は次のように始まる。「フィラデルフィアにある教会の天使にこう書き送れ。聖なる方、真実な方、ダビデの鍵を持つ方、この方が開けると、だれも閉じることなく、閉じると、だれも開けることがない」(黙3:7)。この言葉は、「わたしはあなたに天の国の鍵を授ける。あなたが地上でつなぐことは、天上でもつながれる。あなたが地上で解くことは、天上でも解かれる」(マタ16:19)という、かつてイエスがペトロに言った言葉を彷彿させる。
続いて、「あなたは力が弱かったが、わたしの言葉を守り、わたしの名を知らないと言わなかった」(黙3:8)とあるのは、イエスがペトロに「鶏が鳴くまでに、あなたは三度わたしのことを知らないと言うだろう」(ヨハ13:38)と言った言葉を思い出させる。これらのことから、第6の手紙の宛名「フィラデルフィアにある教会の天使」は、ペトロの兄弟であり、ペトロを最初にイエスに引き合わせたアンデレであると推定できる。彼も漁師であった。
手紙は続けて、「見よ、彼らがあなたの足もとに来てひれ伏すようにし、わたしがあなたを愛していることを彼らに知らせよう。あなたは忍耐についてのわたしの言葉を守った。それゆえ、地上に住む人々を試すため全世界に来ようとしている試練の時に、わたしもあなたを守ろう。わたしは、すぐに来る。あなたの栄冠をだれにも奪われないように、持っているものを固く守りなさい」(黙3:9~11)と書き、「勝利を得る者」への報いをもって終わっている。「フィラデルフィアにある教会の天使」は、「イゼベル」が出現した第4の手紙、ヤコブと想定される「ティアティラにある教会の天使」とともに、他の天使たちのような厳しい忠告を受けていない。アンデレもヤコブも優秀な弟子だったに違いない。それは、彼らがイエスと出会う前に洗礼者ヨハネの弟子だったからではないだろうか。
ヨハネ福音書によると初めにイエスに従ったのは、洗礼者ヨハネの二人の弟子たちであり、そのうちの一人は、「シモン・ペトロの兄弟アンデレであった」(ヨハ1:40)と書かれている。もう一人は上記の理由からゼベダイの子ヤコブだと思われる。それゆえ、その時のいきさつをヨハネ福音記者は詳しく記載することができた。「(洗礼者)ヨハネは二人の弟子と一緒にいた。そして、歩いておられるイエスを見つめて、『見よ、神の小羊だ』と言った。二人の弟子はそれを聞いて、イエスに従った」(1:35~37)とある。二人は師である洗礼者ヨハネからイエスについて、「世の罪を取り除く神の小羊だ」(1:29)、「私よりも先におられた」(1:30)、「聖霊によって洗礼(バプテスマ)を授ける人」(1:33)、「この方こそ神の子である」(1:34)という知識を得ていたのである。
その後の二人の行動には目を見張るものがあった。彼らが従ってくるのを見たイエスが「何を求めているのか」と問うた言葉に、「ラビ-『先生』という意味-どこに泊まっておられるのですか」(ヨハ1:38)と問い返して、イエスから「来なさい。そうすれば分かる」(1:39)という言葉を引き出している。そして勧められるままにイエスについて行って、どこにイエスが泊まっておられるかを見た。さらに夕刻であったので、その日はイエスのもとに泊まった。彼らの行動は直観的で迷いがない。その後、アンデレはペトロに会いに行き、「わたしたちはメシア――『油を注がれた者』という意味――に出会った」(1:41)と言って、彼をイエスのところに連れて行っている。彼は非常に読みが深く、的確に行動する人物であった。
アンデレのこの特性はイエスの弟子になってからも変わらなかった。大勢の群衆がイエスの方へ来るのを見たイエスが、「この人たちに食べさせるには、どこでパンを買えばよいだろうか」(ヨハ6:5)と言ったとき、イエスが何をしようとしているかを直観的に察し、「ここに大麦のパン五つと魚二匹とを持っている少年がいます。けれども、こんなに大勢の人では、何の役にも立たないでしょう」(6:9)と答えて、イエスがしるしを行うきっかけを作った(6:10~13参照)。
このように、いつもイエスの意図に的確に従う堅実な彼は、イエスの信任が厚く、弟子たちの中から、ペトロとヤコブとヨハネだけを連れて出るときも、後を任せることができたのだろう。やがて、他の弟子たちも彼を頼みにするようになった。エルサレムで何人かのギリシア人がイエスに面会を求めたとき、初めに受けたフィリポは、行ってアンデレに話してからイエスにつないでいるところからも、それがうかがえる(ヨハ12:20~22参照)。
アンデレは、次の約束に相応しい者であった。「勝利を得る者を、わたしの神の神殿の柱にしよう。彼はもう決して外へ出ることはない。わたしはその者の上に、わたしの神の名と、わたしの神の都、すなわち、神のもとから出て天から下って来る新しいエルサレムの名、そして、わたしの新しい名を書き記そう」(黙3:12)。
つづく
Maria K. M.