イエス・キリストの黙示。この黙示は、すぐにも起こるはずのことを、神がその僕たちに示すためキリストに与え、それをキリストが天使を送って僕ヨハネに知らせたものである。ヨハネは、神の言葉とイエス・キリストの証し、すなわち、自分が見たすべてを証しした。この預言の言葉を朗読する者と、これを聞いて中に記されたことを守る者たちは、幸いだ。時が迫っているからである。(ヨハネの黙示1,1~3)

 2024/09/23


162. わたしの家

ヨハネの福音書と黙示録から多くの着想を得て描かれたサン・ダミアーノの十字架は、フランシスコの視覚に強く訴え、彼はそれを捉えた。彼は、この十字架から、「フランシスコよ、見てのとおり、わたしの家は完全に壊れようとしている。さあ、行ってわたしの家を修復しなさい」と言う声を三度聞いたという。フランシスコは具体的な教会堂の修復に向かった。 

イエスは、弟子たちと過ぎ越し祭にエルサレムへ上ったとき、神殿の境内で牛や羊や鳩を売っている者たちと、座って両替をしている者たちを見て、羊や牛をすべて境内から追い出し、両替人の金をまき散らし、その台を倒した。そして鳩を売る者たちに、「このような物はここから運び出せ。わたしの父の家を商売の家としてはならない」(ヨハネ2:16)と言った。「弟子たちは、『あなたの家を思う熱意がわたしを食い尽くす』と書いてあるのを思い出した」(2:17)とある。「父が持っておられるものはすべて、わたしのものである」(16:15)と言ったイエスにとって、「父の家」が「わたしの家」なのである。また、御父が持っている家を思う熱意もイエスのものであった。フランシスコは、それを共有したに違いない。 

さらにイエスはこの場面で、「あなたは、こんなことをするからには、どんなしるしをわたしたちに見せるつもりか」(2:18)と詰め寄るユダヤ人たちに、「この神殿を壊してみよ。三日で建て直してみせる」(2:19)と答えた。福音書は、「イエスの言われる神殿とは、御自分の体のことだったのである」(2:21)と解説している。当時のフランシスコにとって、また私たちにとっても、イエスの「御自分の体」とは、ご聖体である。ゆえに「わたしの家を修復しなさい」とは、ミサ典礼を完成することにつながっていた。 

しかし、800年以上も前にすでに新約聖書が成立していたものの、当時の教会は、まさに「ヨハネの黙示録の預言的構成」(下図参照)の第4の預言、「司祭職とご聖体の秘儀が荒れ野と天に隠された教会がたどる運命の預言(12~16章)」の只中にいた。さらに歴史の流れは、教会を、第5の預言、「教会の堕落の預言(17~18章)」に向かわせていた。この狭間で、神は、ヨハネの福音書と黙示録を題材にして、フランシスコに、神の国全体を可視化して見せたのである。 

彼はサン・ダミアーノの十字架に「神の国」の「真理」を見て、「命」を悟った。それはキリストの命であった。彼は、キリストの命によって救われた全被造物を見渡した。そして、振り返った。求める人々にこの「命」に至る「道」を示そうとしたのである。「神の国」を真理として受けた彼の脳裏には、「神の国」についての二つの福音のテーマがあった。貧しさと小ささである。「貧しい人々は、幸いである、神の国はあなたがたのものである」(ルカ6:20)と言ったイエスがその人々の間で生きたこと、それは弟子たちを派遣したときの言葉にも裏付けられていた(ルカ9:3参照)。これがフランシスコにとって具体的にキリストの後に従う方法になった。 

また、イエスは、「はっきり言っておく。子供のように神の国を受け入れる人でなければ、決してそこに入ることはできない」(ルカ18: 17)と言った。それは、弟子たちがイエスに触れていただくために子供たちを連れてきた人々を見て叱った時である。「イエスに触れていただく」ことには、神の洗いを受け入れる者の幸いがある。イエスが、「世にいる弟子たちを愛して、この上なく愛し抜かれた」(ヨハネ13:1)行為は、弟子たちの足を洗うことだった。このように、「子供のように神の国を受け入れる人」とは、神がいつでも洗うことができる小さい者として自分を捉えている人だ。 

こうしてフランシスコは、御言葉によって、貧しい者であることと小さい者であることが、「神の国」の「真理」に至る「道」を示すしるしだと確信した。そしてそこに集中し、徹底的に生きたのである。彼は、「わたしは道であり、真理であり、命である。わたしを通らなければ、だれも父のもとに行くことができない」(ヨハネ14:6)というイエスの言葉を、正面から信じて生きていた。この彼の情熱を頼みに、神は彼にイエスの十字架を負わせた。それは、ヨハネの福音書と黙示録を題材にして描かれたサン・ダミアーノの十字架であった。彼はイエスの名を身に受け、その愛と「神の国」を背負ったのである。 

つづく 

Maria K. M.




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