イエス・キリストの黙示。この黙示は、すぐにも起こるはずのことを、神がその僕たちに示すためキリストに与え、それをキリストが天使を送って僕ヨハネに知らせたものである。ヨハネは、神の言葉とイエス・キリストの証し、すなわち、自分が見たすべてを証しした。この預言の言葉を朗読する者と、これを聞いて中に記されたことを守る者たちは、幸いだ。時が迫っているからである。(ヨハネの黙示1,1~3)

 2025/04/07


190. 7人の弟子と7つの手紙(第5の手紙)

前回考察したように、黙示録の第4の手紙の宛名である「ティアティラにある教会の天使」は、ゼベダイの子ヤコブであった。そこで、第5の手紙の「サルディスにある教会の天使」は、同じくゼベダイの子のヨハネに当たる。ヨハネは、使徒ペトロとともに活発に宣教活動をしていたことが、使徒言行録に記されている。しかし、ペトロとサマリアで福音を告げ知らせたことを報じた後、ヨハネの消息を記していない(使8:25参照)。その後、フィリポの活躍、パウロの回心、そして、引き続きペトロは独自の宣教活動を続けている中で、ヨハネはどのように生きていたのだろうか。兄弟ヤコブの共同体を助けていたのかもしれない。 

そうであれば、ヤコブが剣で殺されたとき、そこに居合わせただろうヨハネは(使12:1~2参照)、この悲劇が、かつてイエスが「確かに、あなたがたはわたしが飲む杯を飲み、わたしが受ける洗礼を受けることになる」(マコ10:39)と予告したことが実現したのだと思ったに違いない。「イゼベル」の出現によってヤコブは裏切りの杯を飲んだ(黙2:20~25参照)。彼は人々の前で惨殺され、彼の共同体は散らされた。ヨハネはこのとき、自分について「主よ、この人はどうなるのでしょうか」(ヨハ21:21)と尋ねたペトロに、復活したイエスが、「わたしの来るときまで彼が生きていることを、わたしが望んだとしても、あなたに何の関係があるか」(21:22)と言った言葉を思い出しただろう。 

「サルディスにある教会の天使にこう書き送れ。『神の七つの霊と七つの星とを持っている方が、次のように言われる』」(黙3:1)で始まる黙示録の第5の手紙は、第1の手紙の「右の手に七つの星を持つ方、七つの金の燭台の間を歩く方」(2:1)と似せて描かれている。第1の手紙の宛名の天使は使徒ペトロであった。このことは、この手紙を受け取る天使であるゼベダイの子ヨハネが、使徒ペトロのように、イエスから特別な召命を与えられていたことを示唆している。しかし、続く手紙の内容は、ヨハネが、兄弟ヤコブが剣で殺され、彼の共同体が散らされたことに衝撃を受け、うちのめされたことをうかがわせる。ヨハネも深手を負ったに違いない。 

「わたしはあなたの行いを知っている。あなたが生きているとは名ばかりで、実は死んでいる。目を覚ませ。死にかけている残りの者たちを強めよ。わたしは、あなたの行いが、わたしの神の前に完全なものとは認めない」(黙3:1~2)。ここには、生き残ったヨハネの体験もまた、兄弟ヤコブと同じく、「わたしが飲む杯を飲み、わたしが受ける洗礼を受けることになる」と言ったイエスの言葉の実現であり、神は、ヨハネがヤコブとはまた別の仕方でキリストの道を全うするよう計画していたことが暗示されている。 

「だから、どのように受け、また聞いたか思い起こして、それを守り抜き、かつ悔い改めよ」(黙3:3)と励ましているのは、ヨハネが福音書の執筆に向かうことを示唆しているのである。イエスの名によって遣わされた聖霊の引き出す言葉こそは、ヨハネにとって命であり、暗闇の中で輝く光であった(ヨハ1:4~5参照)。その言葉の内にイエスキリストの世界観がある。それを表現できるのは、イエスの愛しておられた弟子、使徒ヨハネをおいて他にはいないのである。 

続いて、「もし、目を覚ましていないなら、わたしは盗人のように行くであろう。わたしがいつあなたのところへ行くか、あなたには決して分からない」(黙3:3)と記して、やがてヨハネが、に満たされ、ラッパのように響く大声を聞くまでになることを予告している(1:9~10参照)。その体験が黙示録を書かせたのである。 

そして、「しかし、サルディスには、少数ながら衣を汚さなかった者たちがいる。彼らは、白い衣を着てわたしと共に歩くであろう。そうするにふさわしい者たちだからである」(黙3:4)と書かれている言葉は、ヤコブと、彼と共に殺された者たちについて祈るヨハネに答えを与えている。この手紙の主は最後に次のように約束している。「勝利を得る者は、このように白い衣を着せられる。わたしは、彼の名を決して命の書から消すことはなく、彼の名を父の前と天使たちの前で公に言い表す」(3:5)。「白い衣」と「命の書」のテーマは、永遠の命に導く神の現実を表す黙示録の重大なテーマとなる。 

つづく

Maria K. M.


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