2022/02/14
26. 父と母
創世記の1~2章は、人の無意識の領域に何があるのかを語っている。人は、ここで神が「産めよ、増えよ、地に満ちて、これを従わせよ。海の魚、空の鳥、地を這うあらゆる生き物を治めよ」(創世記1:28)と命じたことをほぼ実現した。今日、他の生き物たちと比べて、その進化の速さと影響力から、人が神に似せて造られたことは、十分に分かったが、自然の脅威や、宇宙の不思議の前には、人は相変わらず森羅万象の一粒に過ぎないことも明白だ。人は、目の前にある事柄をいつも自分たちが考え得るように理解し、それを実現してきた。そして、その必要から、生き物の体の働きを解明し、その情報を私たち自身の必要のためにも利用してきた。自然の食物連鎖から離れ、大きく変化してきた人の食物摂取と排出については、病と死の克服をテーマに、その研究が一般に広く伝えられ、学ばれている。しかし、人の生殖機能については、その研究は進んでいても、多くの現場で性の諸要素の多様性や諸条件の不一致などが壁となって共通認識が得られず、あらゆる深刻な事態を招いている。キリスト者にとっては、その信仰が問われるところである。したがって、人の生殖機能の初めと言える創世記の次の文から考えてみる必要がある。「こういうわけで、男は父母を離れて妻と結ばれ、二人は一体となる。人とその妻は二人とも裸であったが、互いに恥ずかしいとは思わなかった」(創世記2:24~25)。このフレーズは、一般的な人の生殖行動について書いているように見える。しかし、本文の前後関係から見ると、ここに挿入された「父母」という言葉は、神を指していると考えられる。このフレーズは、神が人にとって「父と母」であることを示すために置かれたのだ。イエスは、神の名が「父」であることを知らせた。ヨハネ福音書は、み言葉が「母」であることを示唆した1。このように、人の生殖機能は、「神が人にとって父と母である」ということに、その原点がある。次回もこのテーマを続ける。
【参考】1. ヨハネ1:1~4