イエス・キリストの黙示。この黙示は、すぐにも起こるはずのことを、神がその僕たちに示すためキリストに与え、それをキリストが天使を送って僕ヨハネに知らせたものである。ヨハネは、神の言葉とイエス・キリストの証し、すなわち、自分が見たすべてを証しした。この預言の言葉を朗読する者と、これを聞いて中に記されたことを守る者たちは、幸いだ。時が迫っているからである。(ヨハネの黙示1,1~3)

 2023/03/13

富士山(日本)

82. 日本化 その3

日本においても、1970年代から、西欧やアメリカと同じように、離婚の自由化や性革命が進む一方で、経済の構造変化によって格差社会が生まれた。前回紹介した、社会学者の山田昌弘氏によると、個人主義の発達した欧米においては、このような中で、「結婚が不可欠な社会」から、「結婚が不要な社会」へ移行したのに対し、歴史的な流れから、個人主義が未発達なまま近代社会を経験した日本においては、結婚したくても結婚できない「結婚困難社会」になったという。さらに、結婚と出産を強く結びつけて考える特有の伝統が原因して婚外子を避けるために、婚外の妊娠は、堕胎に向かう傾向がある。この結果、「日本民族は絶滅危惧種」といわれるほどの世界有数の少子化社会から抜け出せずにいる。これに対して政府は指導力を発揮せず、物事を先送りしてきた。

一方、カトリック教会は、霊性に恵まれた長い歴史の道のりを経て、20世紀の神学に、信者とキリストの関係を婚姻の関係によって表現する神秘主義を、高度に神学的な表現とともに導入した。神秘主義は、これまで見てきたように、第二バチカン公会議諸文書にもその影響を残している。このような中で、1970年代以降の格差社会、離婚の自由化や性革命が進んだ社会に生きる信者たちは、キリストの霊性、すなわちイエス・キリストの世界観を理解しないままに、「神と出会う」、「キリストと出会う」という言葉にひかれて、キリスト教霊性や神秘主義を体験しようと求めた。そして、多くの霊性、カリスマ、信心が生まれた。また一方で、司祭による性的虐待被害が世界中で頻発していたが、教会はそれらを隠蔽し続けた。これらの出来事が波のように次々と打ち寄せる中、教会は指導力を発揮せず、物事を先送りしてきた。

このような事態に陥ったのは、オリゲネスから20世紀に至る神学者や神秘家たちが、ソロモンの著と言われる雅歌に描かれた男女の関係を、神理解のアナロジーとした古代の流れを教会の中に引き入れ、神との霊的合一を目指す神秘主義、婚姻神秘主義という裏街道を形成してきたからだ。唐突に感じるかもしれないが、これは、ソロモンに対するイエスの感情を著しく無視した行為だったと言えるのである(ルカ11:29~31,12:27~32参照)。教会は、ここでイエスの言うところの、まさに「邪悪な時代」(ルカ11:29)に、「神秘」というしるしを求め、霊的に、何を食べようか、何を飲もうかとあくせくし、思い悩んだ末、「世の異邦人が切に求めている」(ルカ12:30)霊性や主義を追い求めてきた。イエスが「あなたがたの父は、これらのものがあなたがたに必要なことをご存じである。ただ、神の国を求めなさい。そうすれば、これらのものは添えて与えられる」(ルカ12:30~31)と言っておいたにもかかわらず、教会は、イエスがすべてを成し遂たことを告げる聖霊に注目してこなかったのである(本ブログ№59, 60参照)。

Maria K. M.


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