イエス・キリストの黙示。この黙示は、すぐにも起こるはずのことを、神がその僕たちに示すためキリストに与え、それをキリストが天使を送って僕ヨハネに知らせたものである。ヨハネは、神の言葉とイエス・キリストの証し、すなわち、自分が見たすべてを証しした。この預言の言葉を朗読する者と、これを聞いて中に記されたことを守る者たちは、幸いだ。時が迫っているからである。(ヨハネの黙示1,1~3)

 2022/06/13


43. 不気味な知識の木

神は、ダビデ王に彼の息子ソロモンについて、「私は彼の父となり、彼は私の子となる」(サムエル記下7:14)と約束し、神と人の上に親子の関係を定めようとした。ダビデはそのことをソロモンに告げた。しかし、ソロモンは王になると、ファラオの娘をはじめとして多くの外国の女を愛し、主の目に悪とされることを行い、主に従い通すことはなかった。彼もまたアダムのように権威を後ろ盾に持つ女性たちを支配することによって、権力と権威を維持できると考えたのだ。彼の妻たちもまた、自分の神々に香をたき、いけにえを献げていたことから(列王記上11:8~9参照)、エバのようにそれぞれが神との特別な関係があると錯覚し、神を自身の助け手にしたと思っていた(本ブログ№42参照)。やがて、ソロモンの著といわれる「雅歌」が後世に残され、この書の婚姻のイメージを、神と民の関係に重ねて解釈する人々が現れた。創世記で「蛇」と呼ばれた、人の偶発的情報が、人と共に進化し、「巨大な赤い竜」(黙示録12:3)となって人に取り付き、不気味な知識の木になったのだ。そこで、神はみ言葉を地上に遣わし、神が真の親であることを伝えた。イエスは、すべてのものを生んだみ言葉として、神の母性を持つ神であったが(ヨハネ1:1~5参照)、預言された救い主となるために男性として生まれた。「私が父の内におり、父が私の内におられると、私が言うのを信じなさい。もしそれを信じないなら、業そのものによって信じなさい」(ヨハネ14:11)と弟子たちを懸命に諭すイエスの言葉からは、神が父性と母性を併せ持つ真の親であることが伝わってくる。さらに、「私は父にお願いしよう。父はもうひとりの弁護者を遣わして、永遠にあなたがたと一緒にいるようにしてくださる」(ヨハネ14:16)と聖霊を約束し、「私は、あなたがたをみなしごにはしておかない。あなたがたのところに戻って来る」(ヨハネ14:18)と言ったイエスの言葉は、母の愛に満ちている。神であるイエスは、子である人びとのために、天の父から担ってきた母なる神の知識を、マリアに伝授した。そして、十字架上でご自分の母と使徒を親子の絆で結び、使徒たちは、イエスの母マリアを帯びるものとなった。こうして母なる神の知識をまとった使徒たちに、「巨大な赤い竜」は挑んだが、勝つことが出来なかった(本ブログ№22参照)。竜は彼らに対して激しく怒り、「その子孫の残りの者たち、すなわち、神の戒めを守り、イエスの証しを守る者たちと戦うために出て行った」(黙示録12:17)。ヨハネの黙示の前半では、新約聖書の成立を預言して、イエス・キリストの世界観を訓練者の記憶に入れた。この訓練を続けながらも、13章からの後半からは、人の偶発的情報に気付き、区別する訓練に入る。ここまで導いた冒頭の「幸い」をもう一度思い起こしておきたい。「この預言の言葉を朗読する者と、これを聞いて中に記されたことを守る者たちは、幸いだ。時が迫っているからである」(黙示録1:3)。

Maria K. M.


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