イエス・キリストの黙示。この黙示は、すぐにも起こるはずのことを、神がその僕たちに示すためキリストに与え、それをキリストが天使を送って僕ヨハネに知らせたものである。ヨハネは、神の言葉とイエス・キリストの証し、すなわち、自分が見たすべてを証しした。この預言の言葉を朗読する者と、これを聞いて中に記されたことを守る者たちは、幸いだ。時が迫っているからである。(ヨハネの黙示1,1~3)

 2024/09/02


159. 使徒パウロの召命

「滅びに向かっている古い人を脱ぎ捨て、心の底から新たにされて、神にかたどって造られた新しい人を身に着け、真理に基づいた正しく清い生活を送るようにしなければなりません」(エフェソ4:22~24)とパウロは言った。彼は、ダマスコの途上でイエスと出会い、アナニアに助けられて洗礼を受けた体験から、これらの実感を得た。「神にかたどって造られた新しい人を身に着け」とは、人が神にかたどって造られたことを自分自身の内に再発見し、聖霊と協働する新しい人としての体験を身に着けていくことだ。「真理に基づいた正しく清い生活を送る」過程も聖霊とともにある。 

そのためにイエスは、「預言者の書に、『彼らは皆、神によって教えられる』と書いてある。父から聞いて学んだ者は皆、わたしのもとに来る」(ヨハネ6:45)と言ったのである。「父から聞いて学んだ者」とは、イエスが、「しかし、弁護者、すなわち、父がわたしの名によってお遣わしになる聖霊が、あなたがたにすべてのことを教え、わたしが話したことをことごとく思い起こさせてくださる」(14:26)と言ったように、「父がわたしの名によってお遣わしになる聖霊」から学ぶ者のことである。 

パウロは、聖霊を体験していた。その一方で、他の使徒たちのように直接イエスを知らず、「わたしが話したこと」を記憶に持っていないパウロは、自分の中から何も引き出すことができなかった。使徒パウロは、イエスの3年間の公生活を共に過ごし、彼の受難、死、復活、昇天に遭遇し、聖霊の降臨を体験させるためにイエスが選んで使徒とした者たちとは、全く異なる神の選びの上に立っていたのだ。 

そこで彼は、幼い日からヘブライの聖書に親しんできたテモテに、「聖書の朗読と勧めと教えに専念しなさい」(テモテ一4:13)と命じ、「この書物は、キリスト・イエスへの信仰を通して救いに導く知恵を、あなたに与えることができます。聖書はすべて神の霊の導きの下に書かれ、人を教え、戒め、誤りを正し、義に導く訓練をするうえに有益です」(テモテ二3:15~16)と教えている。「キリスト・イエスへの信仰を通して救いに導く知恵」、これこそがパウロ自身が持っていると実感するものであった。 

神は、彼を選び、彼のすべてが彼のために益になるような仕方で彼を運んだ。彼が「わたしの主キリスト・イエスを知ることのあまりのすばらしさに、今では他の一切を損失とみています」(フィリピ3:8)と書いた「他の一切」の中には、ファリサイ派として復活を信じていたこと、タルソス生まれでローマ帝国の市民権を持っていたこと、テント職人であることも入っていた。これらすべてを神からの恵みとして、彼は大いに利用した。ゆえに彼は、「なすべきことはただ一つ、後ろのものを忘れ、前のものに全身を向けつつ、神がキリスト・イエスによって上へ召して、お与えになる賞を得るために、目標を目指してひたすら走ることです」(3:13~14)と言うことができた。こうして、新約聖書の成立とキリスト教がローマ帝国の国教とされた4世紀の終わりは、パウロの「目標を目指してひたすら走ること」の延長線上に到来した。 

エルサレム神殿が崩壊することをすでに予告していたイエスは、未来のキリスト者のために「新しいエルサレム」を準備していた。その道をローマに向けて切り開くことがパウロの召命であった。ゆえに、イエスは千人隊長の兵営にいたパウロのそばに立って次のように命じた。「勇気を出せ。エルサレムでわたしのことを力強く証ししたように、ローマでも証しをしなければならない」(使徒言行録23:11)。主はパウロのために門を開いている(コリント一16:8~9、コリント二2:12、コロサイ4:3参照)。 

黙示録の七つの教会への手紙には次の箇所がある。「わたしはあなたの行いを知っている。見よ、わたしはあなたの前に門を開いておいた。だれもこれを閉めることはできない。あなたは力が弱かったが、わたしの言葉を守り、わたしの名を知らないと言わなかった」(黙示録3:8)。ゆえに、彼の報いは次のとおりである。「勝利を得る者を、わたしの神の神殿の柱にしよう。彼はもう決して外へ出ることはない。わたしはその者の上に、わたしの神の名と、わたしの神の都、すなわち、神のもとから出て天から下って来る新しいエルサレムの名、そして、わたしの新しい名を書き記そう」(黙示録3:12)。 

Maria K. M.


0 件のコメント:

コメントを投稿

人気の投稿