2023/11/13
117. 使徒の継承者
その12
「決して死ぬことはない」(創世記3:4)という創世記の「蛇」の言葉は、すべての過ちの源となって、仕舞には、アダムとエバの初子カインによって、神が初めて「罪」と呼ぶ殺人にまで至った(創世記4:6~8参照)。しかし、カインは、母から受け継いだ「神の置いた敵意」(創世記3,15参照)の働きによって、神の説得の言葉に目覚め(創世記4:6~12参照)、「私の過ちは大きく、背負いきれません」(創世記4:13)と言うことができた。
このとき彼は、神の告げた言葉に恐れおののき、その結末を想定し、次のように神に告白した。「あなたは今日、私をこの土地から追放されたので、あなたの前から身を隠し、私は地上をさまよい、さすらう者となり、私を見つける者は誰であれ、私を殺すでしょう」(創世記4:14)。彼は、自ら自分に罰が下ることを想定したのだ。これを聞いた神はカインを憐れみ、彼が殺されることがないように、彼にしるしを付けた。彼は主の前を去り、ノドの地に住み、そこに町を築いた(創世記4:10~17参照)。
ところが、カインの子孫レメクが、カインの経験を自分に都合よく解釈し、妻たちに宣言したために(創世記4:23~24参照)、聖書に載った彼のその言葉は、やがて現実となり、人々は、「受ける傷のために人を殺し/打ち傷のために若者を殺す」(創世記4:23)ようになった。復讐がはびこり、地上に広がった殺人とその罪の記憶が消えることはなかった。このようなわけで、神は、聖書に載ったすべての罪の歴史の初めとなったカインの犯した殺人の罪を、カインの告白通りにご自身が贖うことで、その罪の記憶を消去し、これを新しい聖書によって証しすることを望んだ。
時が満ちると、神が独り子となって天の父のもとから降り、いわば追放されたように母の胎内に身を隠し、この世に生まれ成人し、宣教者として地上をさまよい、さすらう者のようになり(マタイ8:20、ルカ9:58参照)、彼を見つける者は誰であれ、彼を殺そうとしたために、ついに捕らえられ、多くの受難を受け、十字架刑によって殺されたのである。これによって、イエスが、「成し遂げられた」(ヨハネ19:30)と言った瞬間、未来永劫すべての罪が消えた。
さらに、イエスは、創世記の「蛇」が言った「決して死ぬことはない」という言葉を神の言葉に置き換え、死から復活することによって、これを証しした。そして、聖霊と信者たちのために御言葉とご聖体を残した。新約聖書を手に取る信者たちは、これらすべての証人である。
今、ミサ典礼の中で、ご聖体に向かって「あなたはメシア、生ける神の子です」(マタイ16:16、ヨハネ11: 27参照)と告白する信者たちは、そのたびごとに、イエス・キリストの名と「決して死ぬことはない」(ヨハネ11:26)という御言葉を、共に身に着けることになるのである。「これらは、神の真実の言葉である」(黙示録19:9)。神の真実の言葉を身に着けた信者は、ペトロの信仰告白の岩の上に建てられた教会を継ぐ者たち、すなわち、使徒の継承者たちである。
Maria K. M.
0 件のコメント:
コメントを投稿